株式会社 尾鍋組

取材先:株式会社 尾鍋組(松阪市)

取材日:2016年1月20日

レポーター名:黒、宮崎、林

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            ~地球環境保全で社会に貢献を~

三重県松阪市の森林に囲まれた落ち着いた空間に事務所を構えるのは株式会社尾鍋組(以下、尾鍋組)。これまでになかった環境にやさしい地盤改良技術「エコジオ工法」を生み出し、その技術を全国の施工代理店に提供しています。「エコジオ工法で人々の役に立って、幸せを感じてもらえる社会をつくりたい。」を理念に掲げる代表取締役社長、尾鍋哲也さん、補佐の尾鍋映理子さん「おもてなし経営」についての思いや取組みを伺いました。

〇企業概要

尾鍋組は1962年11月1日に設立され、より環境によい地盤改良技術を開発するため試行錯誤を繰り返し、2010年に「エコジオ工法」の特許を取得することに成功した。エコジオ工法とは不可能といわれていた砕石(砂利よりも少し大きく、小さく砕かれた石。下図)での地盤改良工事を可能にしたものである。17人の社員全員が一丸となって技術を開発し、現在は全国の施工代理店にエコジオ工法の技術提供と、地域の公共土木工事を行っている。

〇三重のおもてなし経営企業選について

 尾鍋組は様々な仕事をしているが、「外部から認めてもらえれば、社員は自分がしている仕事に自信を持ち、モチベーションアップに繋がるのでは」という思いから応募を決めたそうだ。受賞を社員に伝えたときには、「ほう!それはすごい」と喜ぶがあがり、地域のまちづくり協議会の広報誌にも取り上げられた。この広報誌は周辺地域の各家庭に回覧されるもので、多くの地域の方々に、自社の取り組みについて認められたことを知ってもらうきっかけになったと、嬉しそうに話してくださった。


〇おもてなし経営の取組み

◆社員満足~1人1人と向き合う~

 社員の方は、全員で17人。4人がエコジオ事業部、9人が土木の建設工事の現場で監督、業務を行うスタッフである。社員のやる気、モチベーションアップに繋がればと、建設工事業に必要な土木施工管理技士の資格を取りやすいようお祝い金の仕組みを作っている。

また、社長と社員のつながりを聞いてみると、1対1で話をする機会を作るようにしているそうだ。賞与を渡すとき、社長自らが社員の方1人1人に手渡し、社員に対して評価している部分と、ここを頑張ろうという部分を伝える場を設けている。そこで改善提案の意見などが出れば、幹部会議などで、検討しているそうだ。社長と社員の方の距離の近さが伺えた。少数精鋭の同社だからこその取組みではないだろうか。


◆地域満足~地域にとって必要な企業に~

 尾鍋組は、技術開発もさることながら、ボランティアなどの地域貢献活動も積極的に行っている。清掃車が回っていないような場所の清掃活動を社員全員で行ったり、市内に建てる街の看板を地域の方と一緒に建てたり、そのための資材を提供したりすることで地域の方々と近い距離にいる企業を目指している。一緒に活動した際には地域の方々から「工事したところ綺麗になったね」など声をかけてもらい、工事をしてほしい場所はないかなどの情報交換や会話をすることにより、やりがいや繋がりを感じることが出来るそうだ。

また、全国の施工代理店の方が、エコジオ工法の技術を学びに8日~10日間ほど松阪で宿泊研修を行っている。その際、県外の方に松阪のよさをPRし、地域経済にも貢献したいという思いから、地域の宿泊施設を利用してもらっている。新しい出会いは、地域の方にとってもいい刺激になり、双方に交流を楽しんでもらえている。様々な形で、地域への貢献を考えていることが伺えた。


◆顧客満足~不可能を可能にする~

 「環境保全を考えることは企業の社会的義務だ」という尾鍋社長の強い思いから、従来よりも環境に負担をかけない地盤改良技術「エコジオ工法」は開発された。地盤改良とは、建物の基礎である地盤を強くすることである。人が生活する場所、集まる場所すべてにニーズがる。しかし、従来の地盤改良の方法は、使用するものが人工物であるため地中に与える影響が大きかったり、多くの二酸化炭素が排出されたりするなど、土地の価値を落とし、環境にとって良くない面が多かった。また、大きなコストがかかり、施工に時間がかかるなどの問題もあった。そこで、それらの問題を解決し、より多くの場所や人に使ってもらえる施工技術を開発したいという強い思いから、「エコジオ工法」が作り上げられたのである。

開発にあたっては、機械工作メーカーから絶対に不可能だと言われた部分もあり、何度も失敗を重ねた時期もあった。しかし、約3年間諦めることなく施工実験を重ね、不可能を可能にしたのである。この開発によってより精度の高い、環境に優しい地盤改良が可能となった。コストも抑えられ、施工時間も短縮される。全てにおいて「エコジオ工法」は、従来の地盤改良よりも優れ、顧客にとっても優しい技術だと言えるだろう。

〇今後の展望

 尾鍋社長は、地域社会とかかわるうえでの今後の展望として「これからも、公共工事や土木工事、あるいは災害時などの際には迅速に対応していく。地域にとって必要とされる企業であり続けたい。」と地域への熱い想いを話してくれた。そしてやはり、エコジオ工法を三重の技術として日本に、世界に発信することで三重県のことを多くの人に知って欲しいという三重県への大きな想いもあるそうだ。現在は、全国どこでも施工ができることを目指し、代理店数を拡大している。「いずれは、地盤改良といえばエコジオ工法!と言われる存在にしたい」と、熱く語ってくれた。


〇取材後記

 最初に「エコジオ工法」という言葉を聞いた時には、どういうものなのか、どこで使うのか、どう地域のために役立てるのか全く想像がつきませんでした。そもそも、地盤改良というもの自体になじみがなく、身近なものではありませんでした。しかし、取材を通して社長がエコジオ工法に抱いている想いを聞き、どんどんエコジオ工法という新たな地盤改良技術の魅力に引き込まれていきました。

 尾鍋組は、環境について考えることは企業の使命である、という強い想いから『環境にやさしい製品』を作り上げるため、努力を積み重ねてきました。試行錯誤してやっと出来上がった機械も、一度の試行テストで壊れることが何度もあったそうです。尾鍋組にとって、いつ完成するか分からない技術に立ち向かうことは簡単ではなかったはずです。それでも成し遂げられたのは、尾鍋社長の目標に向かって邁進する力があってこそだと思います。

 これからの未来、尾鍋組のように掲げた理念に向かって絶えず努力をし続ける企業が、増えることを願います。

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