有限会社 ギルドデザイン

取材先:有限会社ギルドデザイン(亀山市)

取材日:2016年1月15日

レポーター名:狩野、可知、森

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               ~趣味が仕事である幸せ~

有限会社ギルドデザイン(以下、ギルドデザイン) はモータースポーツが盛んな鈴鹿市に隣接した亀山市に事業所を構える会社です。「自分たちの欲しいものをつくる」ことをモットーにオートバイパーツとスマートフォンケースの企画から製造、販売まで行っています。この会社の「おもてなし経営」への取組やその想いを、モバイルプロダクト事業部取締役の松葉(まつば)真一(しんいち)さんに伺いました。

〇企業概要

 ギルドデザインは、1990年の創業以来、オートバイパーツの企画・販売を事業としているが、純正品のための部品ではなく、オートバイの改造するための部品を製造している。独自のブランド「G'craft(ジークラフト)」は、専門雑誌でも評価が高く、世界中にユーザーがいる。しかし全盛期に400万台が販売されていたオートバイ市場は年々縮小し、現在では40万台にまで落ち込んだ。その状況で、「オートバイパーツの製造で培ったアルミ加工ノウハウを活かせる何か新たな事業を」と考えたのがスマートフォンケースの事業だ。アパレルメーカーやアニメキャラクターとコラボレーションしたものからシンプルなものまで、多様な商品をインターネット販売している。

 この会社の企業理念は「あそび心の実現としあわせの実感」である。「自分の趣味を仕事にして、それで生活ができるようになったら幸せ」と松葉さんがこう捉えているのは、社内に自分の趣味を大切にできる制度や商品に対する考え方があるからである。


〇三重のおもてなし経営企業選について

 三重のおもてなし経営企業選に応募したのは、「社員が元気に楽しく働けるような職場づくり」を目指していたことがきっかけで、松葉さんから社長へ話を持ちかけたところ、社長もおもてなし経営について勉強し推進しようとしていたため、すぐに応募を決めたそうだ。受賞後は、社外からの反応が大きかったという。「お祝いの花が取引先の方からたくさん届いて、知名度の高さを感じました」と松葉さんは振り返っていた。

○おもてなし経営への取り組み

◆社員満足 ~社員のモチベーションと技能を高める「放課後」~

 ギルドデザインにはユニークな福利厚生制度、「放課後」制度というものがある。これは、会社の終業時間(17時)以降は、材料費さえ払えば社内の機械を自由に使えるというものである。「うちの会社の人間の多くはバイクに乗っているので自分の部品が欲しくなるんですが、部品を作るには図面を書き、機械を動かすプログラムを書いて、工作機械を動かすという3つのことができないといけません。だから社員たちはこの時間を使って、自分の部品が作れるようになるために社員同士で技術を教え合っています。」と松葉さん。ギルドデザインではこの制度によって社員の多能工化が達成されているのである。

 また、ギルドデザインでは主に製品の在庫管理や梱包を担当する13名の女性パート従業員への「おもてなし」も存在する。それは子どもの夏休みなど長期休暇中の出勤免除である。「子供を家に一人で置いておくのは心配だと思うので、長期休暇中は来なくてもいいよと言っています」と松葉さんは話していた。

 ◆地域貢献 ~アルミ加工技術を活かして~

ギルドデザインではオートバイ部品製造の技術を生かし、中学生が鈴鹿サーキットを身近に感じる機会を作っている。スマートフォンケースの事業が順調に業績を上げてきたころ、松葉さんの知り合いだった鈴鹿高専の先生に誘われて、「Ene(エネ)-1GP(ワングランプリ)*」に出場する中学生のチームへ技術協力をしたのである。ギルドデザインで車体を作ったのち、動力システムなどの構築は中学生が行い、レースに臨んだそうだが、松葉さんは、「利益を何らかの形で社会・地域に還元したいと思っていました。そのときにこのお話をいただいたので、うちの得意なアルミで車体を製作しました」と当時を振り返っていた。

また、近所の人から壊れた農機具の持ち込みがあれば、真っ先に工場の設備を使って修理することに決めている。「地域で上手くいってないと難しい。どこかで恩返しがしたかった」と地域の人々への想いを松葉さんは話した。 

 ◆顧客満足 

 スマートフォンケース ~こだわりぬいたケース~

 ギルドデザインの商品開発は「不満」からスタートする。スマートフォンケースをとってみても、「簡単に液晶画面が割れてしまう。それなら、液晶画面を守るケースを作ればいい」というところから開発が始まった。ケースの四隅が膨らんでいるのがギルドデザインの商品の特徴だが、見た目は不格好なため、社長にすら「なくした方がいいのではないか」と言われることもあるそうだ。しかし、スマートフォンを落とすときに一番下にくる四隅を膨らませ、壊れないようにする「お客様のiPhoneを守る」というブランドコンセプトがある以上、妥協はできない。このように、デザインより機能を優先させた商品作りをしている。このお客様への想いが伝わっているのだろうか、ケースのファンは徐々に増加している。

また、「純日本製」にもこだわっている。パッケージの箱は富山県で手貼りされており、取り付け時に使うレンチ・ねじなども全て日本製に統一されている。「周りの企業が日本に仕事がないからと、東南アジアに進出していきます。それが寂しいので、少しでも日本のものづくりに貢献できるように続けています」と松葉さんは日本のモノづくりへの想いを語っていた。

 オートバイパーツ ~お客様の不満を形に~

 ギルドデザインでは商品に対するお客様の要望を大切にしている。オートバイ部品に関しては、北海道から沖縄県まで全国のカスタムショップで行われるイベントに参加し、商品ユーザーに積極的に話を聞きに行く。そこで、困っていることや不満に思っていることを聞きだし、そのなかで「これは!」と思うものを新商品開発に取り入れるのだ。太いタイヤを履かせるキットがちょっと高すぎるという声を聞き、追加部品をなるべくなくしたキットを販売したところ、大ヒットし、現在では他社も販売するほどの定番となったという例もある。さらに、お客様から頂いたアイディアはアイディア帳に保存され、商品化された場合にはお客様に試作品をプレゼントしているそうだ。自分のアイディアが形になったところが見えるとお客様は嬉しい。お客様の心を掴む「おもてなし」がこの企業では行われている。


〇今後の展望

 現在はスマートフォンケースを企画から販売まで行っているが、これと同様にアルミでできた名刺ケースの販売を目指している。スマートフォンケースは2年ほどで買い替えるユーザーが多いが、「もったいない。さらに長く使ってもらえる商品を」と考えたのが名刺ケースだ。2016年7月には東京都、9月と10月にはドイツとニューヨークの文具の展示会に参加する予定で、すでにアパレルメーカーなどとのコラボレーションも決まっている。さらに、ギルドデザインの強みであるアルミ加工を活かせる財布や釣り具など新たな商品の開発を考えているそうだ。また、亀山市内で工場を移転し、5年、10年後には航空産業や医療器具産業にも参入していきたいという想いがある。「今の仕事がこれから10年以上あるとは思わない。一つの事業にしがみつかず、自分たちの強みを生かした次の事業を探すことが大切」と松葉さんは最後に語っていた。


<取材後記>

 取材後に感じたのは「私もこういう企業で働きたい」ということです。松葉さんの楽しそうにご自身の仕事について語られている様子や、社内を見学させて頂いたときの社員・パート従業員の方々の和気あいあいとした雰囲気はとても居心地が良かったです。これはお客様への「おもてなし」だけでなく、ギルドデザインで働く方々への「おもてなし」も十分に行われているからこそだと感じました。工場見学をさせて頂いた際、従業員の方が色紙に書いた今年の目標が壁に貼り出されていたのを拝見しました。色紙に書かれた目標の自由さからも、職場の和やかな様子が伝わってきて職場環境の良さを実感しました。今年には新しい工場へと移転するということですが、それとともにこれから始まる新規事業にはどのような「あそび心」が込められており、「しあわせの実感」へと繋がるのか待ち遠しいです。

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