株式会社みなみ製麺
取材先:株式会社みなみ製麺(伊勢市)
取材日:2016年1月25日
レポーター名:樋口、長谷部、蒸野
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~伊勢うどんへの強いこだわり~
株式会社みなみ製麺(以下、みなみ製麺)は、郷土の伊勢うどんを安全に美味しく食べてもらいたいという熱い気持ちのもと、三重県伊勢市を中心に、伊勢うどんを主とした麺類を製造・販売している会社です。この会社の「おもてなし経営」への取組やその思いを、代表取締役の濱口義明さん、販売課長の西村浩司郎さんにお伺いしました。
〇企業概要
1958年創業のみなみ製麺は、昔から伊勢に根付く会社だ。平成22年4月に、先代から受け継いできた土地を離れ、今の民家が周囲にない伊勢市村松町へと工場を移転した。ちょうどその時期、濱口社長は先代から経営のすべてを引き継ぎ、正式にみなみ製麺を受け継いだそうだ。継承後の平成24年には伊勢うどんを製造する会社としては初めてのISO22000を取得した。
〇三重のおもてなし経営企業選について
三重のおもてなし経営企業選に応募したのは、「自らの経営を第三者の目で見てほしい」という思いがあったからだ。というのも、濱口社長は先代から会社を引き継ぎ、自身の信じる理念に基づいた経営を行ってきたという自負があったからだ。会社の経営を担うようになって数年がたち業績は伸び、目に見える形で結果がでてきたからこその応募であったようだ。
〇おもてなし経営の実践
◆顧客満足 ~商品への強いこだわり~
安全で美味しいものをその日のうちにお客様に届けたい、という強い思いのもと「当日製造当日配送」「衛生管理」「品質向上」の3点を徹底している。
「当日製造当日配送」は、先代から続く伝統だ。深夜から工場を稼働し夜明け前には出荷の作業を始める、というのがみなみ製麺の日常である。最近では、式年遷宮の効果でメディア露出が増え注文が殺到するときもあり、そのようなときには日付が変わる前から製造を開始することで対応している。「県内で夜中から起きてやっているところは、うち以外ない」と濱口社長は力強く語った。配送に関しても並々ならぬこだわりがあるようだ。伊勢うどんは、すぐに傷んでしまうので、管理が難しい商品である。そのため、配送の際にはしっかりとした管理体制が要求される。みなみ製麺は製造と配送を部門ごとに区切るのではなく、全社員が、製造も配送も行う。そうすることで商品に愛着がわき、商品の扱いも自然と丁寧になるそうだ。さらに、配送の際には、3回のチェックをし、それぞれ別の人が行うことで配送ミスが起きないようにしている。
「衛生管理」も徹底しており、安全な食品提供をしている企業におくられる国際的な規格である「ISO22000」を伊勢うどんの業界では初めて取得した。この規格の取得は、社員の意識に更なる向上をもたらしたそうで、事実、工場内は隅々まで清掃がされていた。安全なものを食べてほしいという思いが形になった結果が、取得につながったようだ。
「品質向上」の仕組みとしては、全社員が必ず参加する「月例会議」がある。これは、日々の作業の棚卸しをする場で、参加者全員に問題提起の義務付けを行っている。根底には、濱口社長の「何も問題ないことはありえない」という考えがあるからだ。社員の方いわく、問題提起の場が設けられているおかげで、日々の作業の問題点を考えながら働くことができるそうだ。
このように、みなみ製麺は伊勢うどんという商品に対して強いこだわりを持っていることがわかる。こうした付加価値の高い商品の提供こそが最大の顧客満足につながると考えているのだ。
◆社員満足 ~従業員が胸を張れる会社に~
濱口社長は、「社員が働きやすい会社にしたい」と話す。そのために、工場移転の際には、設備を更新し、清掃手順も新入社員が分かりやすいようにマニュアル化したそうだ。以前の工場のよりも清掃作業が格段に楽になったそうで、社員の方は「今の工場の方が働きやすい」と笑顔で話す。
また、奉納(ほうのう)市(いち)のエピソードはとても印象的であった。みなみ製麺は、伊勢神宮で行われる神嘗祭(かんなめさい)に毎年伊勢うどんを奉納しており、その後に行われる奉納市にも積極的に出店している。ある年、このお店の経営のすべてを社員の西村さんにまかせたそうだ。西村さんは、一任されたことを誇りに思い、その年の出店では初日の段階で全日程の売り上げ目標を達成してしまったそうである。その年以来、毎年のお店の切り盛りは西村さんが行うことになり、売り上げ目標を上回った年には必ず打ち上げをするそうだ。また、この奉納市ではいつもの卸売りとは違い、実際に最終消費者に販売するので「美味しいよ」や「ありがとう」などのお客様の生の声を聞くことができる。奉納市への出店は、社員のモチベーションアップにも繋がったそうだ。
◆地域満足~伊勢という土地に感謝して~
「何もしなくてもお客様が来てくれる伊勢という地域だからこそ、その状況に甘んじず最高の商品を提供できるように努力していきたい」と、濱口社長は話す。「伊勢の人たちが最大限の努力をすることで、地域全体が盛り上がっていく」と地域を愛する思いを口にしてくれた。
こうした思いがあるからこそ、みなみ製麺はきたる伊勢志摩サミットに向けてもいち早く動いている。お土産用の伊勢うどんのパッケージには早速、外国人でも読めるように英語表記の説明を取り入れ、伊勢の伝統を世界にも発信していこうと考えている。この英訳は伊勢に在住した経験があるイギリスの方にしてもらったそうで、細かな部分で“おもてなし”を感じることができた。
〇今後の展望
濱口社長は今後の展望について、「伊勢うどんの飲食店を県内・県外でも開きたい!」と話す。伊勢うどんは、品質管理が難しくすぐに傷んでしまう。そのため、伊勢うどんを提供しているお店では、長持ちするタイプの伊勢うどんを使用することが多いそうだ。しかし、社長いわく、日持ちするタイプの伊勢うどんは、しないタイプ(チルド麺)と比べてどうしても味が落ちてしまうという。お客様にチルド麺を使った美味しい伊勢うどんを食べてほしいという思いから、飲食店開業の展望を語ったようだ。また、地元の人は、伊勢うどんに卵をかけて食べることもあるそうで、みなみ製麺では卵とうどんのセットを販売している。「地元ならではの食べ方を全国の人にも知ってもらいたい」と濱口社長は語った。
〇取材後記
最近メディアへの露出も増え、人気が上昇してきているみなみ製麺の伊勢うどん。その人気の裏には、美味しさ、安全性、さらにはそのような商品を作るための社内環境の改善などに対して、決して手を抜かない濱口社長の熱い想いと、それを支える社員の皆さんの存在がありました。そんな誠実な姿勢こそが「おもてなし」なのだと感じる取材となりました。取材当日もいつも通り誰よりも早く出社したという濱口社長。皆さんも一度、この熱意とこだわりが詰まったうどんを召し上がってみてください!
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