NPO法人 愛伝舎

取材日:平成26年10月22日、11月14日

取材先:NPO法人愛伝舎(鈴鹿市)

レポーター名:丹羽、倉田、宮崎

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          ~NPO法人愛伝舎 坂本さんの思い~

皆さんは、「多文化共生」とはどのようなものであると考えますか?

「多文化共生」を目指し10年間、更にはそこから派生した様々な社会問題にも目を向ける、そんなNPO法人愛伝舎(以下愛伝舎)の代表、坂本久海子さんにお話を伺いました!

〇今までの10年間

 坂本さんは、ブラジルに5年間住み、その帰国後、子供たちの教育が保障されていない、外国人の方が受け入れられる仕組みができていないと感じ、愛伝舎を設立した。そこでは、日本語教室、教育セミナー、生活セミナーなどを開催してきた。

 しかし、そのような活動を続け、様々な問題を目にしていくうちに自分の目指してきた「多文化共生」について改めて考えるようになったという。そのなかで、「“共生”ってなんだろう?」という疑問にたどり着いた。「“共生”は日本人も外国人もお互いにフィフティーフィフティーであるべきであり、日本人との交流をするのではなく、外国人に日本語を教えたり、日本の文化に無理に合わせようとしたりするのは“共生”ではないのではないか」と語る。そのような思いと、そして行政のインフラがある程度整備されてきたために、今は行政の委託事業ではなく、ボランティア活動として愛伝舎の方各々が取り組んでいる。


〇最近の取り組み

 最近では、10月26日に、ブラジルにあるNPO法人が行っているカエルプロジェクトと協力し「子供の将来を考える 懇談会2014」を開いた。

実際に話を聞く中で、ブラジルの子供たちを取り巻く様々な現状を垣間見ることができた。ブラジルの子供たちの中には、日本語を話すことができないことが原因となって、発達障害だと誤診を受けてしまっていることがあるとわかった。これは、日本に正確な判断ができる専門家がいないことも大きな原因だという。また、慣れた日本を離れてブラジルで生活を始める前に、子供の心構えとして何をしておくべきか、など多くの意見や疑問が飛び交った。

カエルプロジェクトとは、日本語とポルトガル語という二つの言語の間で戸惑い、生活習慣に馴染むことができずに苦しんでいる子供たちや、教育や子育てに悩むブラジル人の親御さんのサポートをするものだ。

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『カエルプロジェクト?カエル?なぜカエル?』

カエルプロジェクトの語源は3つあるそうです。

1つ目に、日本からサンパウロにブラジルの子供たちが帰ることを

示しています。2つ目に、カエルは陸と水という2つの環境の中で

生きていくことができます。ブラジルの子供が、日本とブラジルと

いう2つの環境の中で生きていけるようにという願いがあるそうです。

3つ目に、カエルはオタマジャクシが完全変態し、成長した姿です。  

ブラジルの子供たちが、成長するという意味で変わってもらえるように、

という思いが込められています。 

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 また、2014年9月から新しい取り組みとして、奥伊勢にあるフォレストピアという山荘に日本人だけでなく、多くのブラジル人が訪れてくれるようにプロデュースをしているそうだ。少子高齢化に伴い、過疎化の進む地方に観光客を迎え入れることで、地域を活性化させたいという坂本さんの思いがある。多文化共生という目的ではなく、純粋な交流の場所としてどうやったらより魅力的な場所にすることができるのか、アイデアを日々練っているそうだ。


〇これからの日本に向けて…

「日本の社会に対して私は何が出来るか」というのが坂本さんの現在の思いである。坂

本さん自身、大学生の時に社会学を専攻していたこともあり、現代の日本における様々

な社会問題について関心があり、そうした問題に対して自分が解決に向けてのきっかけ

づくりをできればと様々な活動を行っている。例えば、坂本さんは日本の人口減少に問

題意識を持っている。今年の11月には鈴鹿市の玉垣小学校にて保護者や教員に対して

日本の人口減少に関する内容の講演を行った。講演の中で日本の人口や昨年度の新生児

の数など様々な質問を参加者に投げかけたが、正確に答えられる人はほとんどいなかったそうだ。

「多くの人は日本の社会問題を他人事のように考えている。」と坂本さんは語った。ひ

とりでも多くの人が日本の社会問題にも関心を持ち自分と関係のあることだと感じる

ことが社会問題解決の第1歩になるのではないだろうか。

多文化共生にとどまらず、愛伝舎で培ってきたネットワークを生かし、日本の社会問題

の解決に繋がるようなきっかけづくりをしていくため坂本さんは新たな一歩を歩み始めて

いる。


〇編集後記

「“多文化共生”を目指す!」というと、対外的には非常に良いイメージで受け止められます。しかしながら、坂本さんのお話を伺い、改めて本当の「多文化共生」を目指している方はどれほどいるのだろうか、と思い直しました。本当の「多文化共生」とは、坂本さんが言うように、日本人と外国人がお互いの文化や背景を尊重し、学びあえる関係になることを指すのではないか、そしてそのような関係が増えると良いな、と思いました。みなさんもこれを機に「多文化共生」について改めて考えてみてください。

 更に、坂本さんのそうした「多文化共生」への思いを感じられたと同時に、坂本さんの一貫して社会のリスクを減らしたいという思いと、その行動力も強く感じることができました。自分たちは、そのような社会問題はどこか自分には関係ないような気持ちでいたことに気づかされました。今回、坂本さんという磁石に引っ張られ、巡り合えて大変良かったと思います。この坂本さんの思いを、この記事を読んだ皆さんが感じ、日本の社会について見つめ直すきっかけとなれば幸いです。


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