農業生産法人 株式会社 夢活菜

取材先:農業生産法人 株式会社 夢活菜 (伊賀市)

取材日:2016年7月13日(水)

レポーター名:長谷部、廣岡、杉山

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             ~伊賀から関西へ世界へ~

伊賀市にある農業生産法人株式会社夢活菜(以下、夢活菜)に取材に行ってきました。夢活菜は独自に開発した水耕栽培技術による葉物野菜の生産や障がい者就労支援事業行っています。水耕栽培農法を活用した農業や、障がい者雇用の現実や夢、また、夢活菜にとっての地域貢献について、代表取締役の上山浩さんと上山華代子さんに伺いました。

 

〇企業概要

 浩さんは以前、都会の大きな飲食店企業で働く一方で、小さな頃に見ていた父の農業をする姿に憧れを持っていた。そんな中で、仕入れのために地方の農家を訪問すると、農家が適正に儲かっていない、買い手である飲食店に利益を搾取されている、という現状を目の当たりにした。そこで、農家が適正に儲けることが出来る方法を考え、「事業になる農業。しかも、一人勝ちで無い、つまり世間の役に立つ農業」を夢としてその実現のために2010年に夢活菜を設立した。


〇水耕栽培

夢活菜が育てている農産物は、穀物・大豆・根菜などの大規模農業に向くような野菜ではなく、葉物野菜だ。それは、新鮮な葉物野菜の需要は世界中で右肩上がりに伸びているからだ。葉物野菜というのは野菜の中でも特に採算が合わないが、通年生産が可能な水耕栽培ではそれが克服できるのだそう。そこで、夢活菜は水耕栽培事業を進めるようになった。

 また、夢活菜には独自の水耕栽培システムがある。水耕栽培とは、環境を制御して通年収穫性を確保し、収穫量を上げることを可能にする農法だが、より効率的で安定的な収穫が可能な水耕栽培を求めて、大阪府立大学小田農学博士の協力によって独自に開発・改良された。このシステムは低コストで水温調節ができるため、通常の水耕栽培よりもさらなるコストダウンが期待できるのだ。


〇障がい者就労支援事業

 「ある人が言った『障がい者就労支援をすると人材が育ち、業績が上がるんですよ』という言葉を信じて始めたんや」と浩さんは言う。障がい者就労支援の根幹は、傾聴し共感することにあると浩さんは考える。具体的には、一人一人違うハンデを持つ障がい者と向き合い、相手が望むことは何だろうか、自分はどんな支援ができるのであろうか、どうしたら障がい者の能力を引き出せるのだろうかということを聞き、従業員が自ら解決策を考える。そうすることで彼らの考える力が養われる。そして、従業員一人一人が農業のマーケティングを考える力を養い、仕事に活かしていくことが出来るという。つまり、障がい者の支援が結果的に業績の向上につながるという考え方である。

 そして、農業は標準化が難しく、複雑で、マニュアルどおりに行えばうまくいくほど容易ではないと言われている。しかし、水耕栽培であれば、この困難を乗り越えることができる。そこに着目し、だれでも作業が出来るようにすることで、障がい者が法定雇用率達成のために雇われたと感じるのではなく、労働力として認められる形で雇用することを可能にした。とりわけ、特許取得済みの夢活菜の水耕栽培であれば、「障がい者が自分たちも必要とされているということを実感し、安心して働くことができるだろう」と浩さんは言う。


〇今後について

 「栄養価が高く、農薬不使用の三重県産水耕野菜を用いたサラダパック事業で、世界中で外貨を稼ぎたい」と浩さんは大きな夢を掲げた。そのためにまずは、関西への販路を広げることを第一の目標としている。伊賀という立地はそのマーケティングを担うのに適した立地であるそうだ。そして、「伊賀で農業を発展させることが、最終的に地域活性化につながる」と浩さんは熱く語る。


<編集後記>

 私たちが集合場所に到着してから、さっそく話を始めなさったので最初は驚きましたが、あらかじめ送った質問事項について資料としてまとめてくれるなどして頂き、「すごく真面目で熱い方なんだな」と感じました。

 私は取材に伺うまで、夢活菜には地域貢献ということが念頭にあるために、水耕栽培事業や障がい者の就労支援事業を行っているのだと予想していました。また、なぜサラダ野菜という採算の取りづらい野菜に絞って水耕栽培農業を行っているのだろうと疑問を感じていました。しかし、上山さんによる新鮮で現実的かつ魅力的な農業・福祉のお話を聞く中で、そうした予想や疑問の答えが見つかりました。農業を元気にしたいという上山さん自身の熱い想いが事業として具現化され、その副産物として地域貢献が達成されているということには、驚きました。さらに、農業が衰退しているだけでなく、現状の販路・組織構造には様々な問題点を抱えているという厳しい現実の中、農業を事業として継続させ、地域貢献をすることはとても難しいことだと知りました。そんな中、協力関係を築いた農業が今後は大きな可能性を持つと分かりました。それと同時に、夢活菜独自の取り組みは、改めて画期的だと感じました。

 最後に、障がい者雇用促進メッセージを頂きました。「馬鹿にした雇用はやめたれ。歓迎されていない空気は感じるやろうから。」という障がい者への思いやりと同時に、「業績は向上するのは確かやから、そんな時に水耕栽培はいかがでしょうか」という経営者側へのメッセージを頂き、経験者の語る障がい者雇用の実態は説得力がありました。障がい者が社会との接点を持つためにも、これからもより農場と企業とのパートナーシップの輪を広げ、障がい者の就労支援、農家同士が協力した農業を展開し、三重の農業を発展させていくでしょう。

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